■個人的に使いたいハンドルがあって、ずいぶん昔から持っているハンドルを引っ張り出してきた。で、そのハンドルにはグリップが取り付けたままになっていたので、引っぱり抜いてみた。グリップの方は硬化してしまってもう使い物にならないのだけど、切り裂くことなく苦労して取り外す。切って外すのがなんとなく嫌な感じでね。そうしたら、はじめは気づかなかったのだけど、グリップの奥の方で何かがキランっと光る気がする。「ん? 」
…….いちど放り出したグリップを手に取って見てみると、グリップのいちばん奥、つまりハンドルバーのもっとも外側にあたる部分の内側に銀色の何かが……….。よくよくみるとそのキランっ、は5セント硬貨だった。それは左右のグリップの両方に入れ込んである。「はは〜ん、これは転倒した時にハンドルのダメージを軽減するように入れ込んだものなんだな」と思った。 でもまてよ。こんなところにコインを入れたってダメージ軽減にはならないんじゃないか? と、思って知りあいに訊いてみたら、アメリカにはラッキーペニー(アメリカでは 1、5、10、25セント硬貨をペニーと呼ぶ)といって、ペニー硬貨で縁起を担ぐという通念があるらしい。で、ラッキーペニーは表側(人の顔がある方)がこっちを向いていないとダメなんだそうだ。なーるほど。そういうわけか。つまりこの車輌の乗り手は縁起を担ぐ意味でグリップの奥にこの5セント硬貨を入れ込んだわけね。
なんだかいい気分だった。この乗り手は何かの幸運を手にしただろうか? どんなライダーだったのだろうか? いまはどうしてる? いろいろなことが頭に浮かんだ。おもしろいね。そうして時代を経て彼のラッキーがここにある。硬化しているとはいえ、グリップエンドは無傷の状態だったから、この乗り手は転倒して大けがをすることもなく彼のBMXライフを過ごしたことだろう。ひょっとしてまだ乗ってる? …….イカしてるなあこの感じ。
ラッキーペニーは丁寧にとり出して、新しく組み込むグリップには5セント硬貨と同じくらいの大きさの100円玉を入れてみた。…….カッコ悪い(笑)。
そんなわけで、いちどとり出したラッキーペニーはもういちど新しいグリップの奥に、トマス・ジェファーソンの顔をこちらに向けて入れ込んでみた。この硬貨、通称” ジェファーソン・ニッケル ” と呼ばれるものらしい。” ニッケル ” というところがまた…..(笑)。グリップエンドにラッキーペニー。そんなちいさな幸福が きょうの収穫 。
ところでとり出した5セント硬貨は、左が1966年製、右側が1973年製のものだった。見ての通り右側の新しい方がサビサビだ。” 新しい方が質がよくない ” だから錆びたり強度が落ちていたりする。日々、金属にかかわっているとそういうことを思うことがある。同じような条件で左と右に存在したラッキーペニーは、おそらく微妙な質の違いでこんなにも経年の変化具合が変ってしまったんじゃないだろうか。まあ、その辺りは定かじゃないけれど、そんなことの発見がまたおもしろかったな。10セントよりも、遥かに大きな収穫だよね。
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