■ヤマハのモトクロス・レーシング・バイクー BYZ。1979年式のNOSフレーム。激しく珍品です。
’79年…..BYZにとってこの年号はとても意味のある年式です。このとき、YAMAHAにはすでに同じようなダンパー式のプレイ・バイクで有名なMOTO BIKEという車輌が存在したのですが、このBYZはその辺りとは少し意味合いの異なる車輌なんですね。どういうことかというと、1979年は第1回のパリーダカール・ラリーが行われた年。10000キロを市販車ベースの車輌で走り抜くという、この途方もない冒険ラリーは今でもその過酷さとハイスピードぶりで有名ですが、その第1回大会で総合優勝を果たしたのは他でもないYAMAHA。シリル・ヌブー駆るダートレーサーXT500だったんですね。
パリダカールの長い歴史の中で、二輪車が総合優勝を果たしたのは後にも先にも79年のYAMAHA XT500が獲得したただ一度きり。だって、パリダカなんて考えただけでもオートバイが総合優勝できるような条件じゃないですものね。でも79年のXT500はNO.1になった。
パリダカ・レーサーのXT500は、実はその骨格を使ったレーサーバージョンであるTT500というモトクロッサーをベースに、公道型市販車の方のXT500のイメージで仕立てられた車輌。10000キロを高速で走りきるために施された機構や装備は、その後のダート・レース・シーン(オートバイだけじゃなく)を変えてしまうほどのものなわけです。そこでおこなわれた、目的に対するアプローチはとても純粋で高次元なものだったんですね。データを重ね、実験を繰り返し、少しづつ精度を極めていった集大成。もう、ダートでのあらゆる条件を熟知した結果がパリダカXTなんです。
で、そのパリダカXT500を製作したのは日本のヤマハではなく、フランス・ヤマハ(ソノート・ヤマハ)のレース部門だった。BYZはそのフランス・ヤマハが仕立て上げた、希有で純粋なダート・マシンじゃなかった、自転車として世に生まれ出たんですね。BYZはそういう血脈を濃く受け継ぐ存在なんです。つまり’79年にパリダカで総合優勝したチームYAMAHAが、同じ年にそのノウハウを注いで作り上げたダート・ロード自転車。それがBYZ。
そのフレーム・スケルトンは他では見られないような安定型です。ライダーをリラックスさせることがダートでうまく走るための最良と考えたのでしょう。それはアスファルトの上でも同じ。キャスター/トレール角などはXT500とかなり近似している感じがします。モノ・ショックのダンパー(KAYABA製ね)はその後、’82年のXTシリーズ(オートバイね)が採用したMONOCROSSサスペンションのよう。ガセットの形態も肉抜きも、どこかレーシングマシンを想起させるデザインです。知恵の輪の様に入れ込むリア・フレームのパイプ加工などもオートバイのつくりですね。チェーン・ステイには「Field And Track Racing」なんていう新車のタグが貼ってあるところがいい。
どーです。この感じ。そして時代感をカタチにしたようなこのディテール。わたしの目には、時の風をはらんで滑り往く風神のように見えるね(笑)。そしてまた、YAMAHAのレーサーでしかないストロボ・ラインのこのグラフィック! いいねえ。この野暮ったさがいとおしい。
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