■クチナシは夜に香る。それは夏の扉が開け放たれる少し前、とても密やかに季節の闇を染めるのだ。
近所の小道を夕ごはんでも食べに行こうかと走っていたら、不意にクチナシの匂いがしたよ。ふっ、と香って、すぐに消えてしまう。クチナシの匂いってのはそんなやつだ。どこで咲いているのかと探してみても見つからないことも多いな。実際に花をみつけたとしても、近づくと予想外にけばけばしい匂い。けれど、どこからか風に香る夜のクチナシは、まだ若かった頃の憂う記憶を呼び起こすのだ。まあ、なんというかそれが ” 甘酸っぱい ” のですよ。そんなことを浮べながら夜を往くのって、けっこう素敵だ。
世田谷通りの三叉路を曲がったらクチナシの花が咲いていた。花は匂いとはまた別の印象で、青い街灯にさやか輝いている。その輝きが きょうの眺め 。どうしてかこころが弾んだ。ATOMのフリー・ホイルが「チー」と音をたてた。どこか行きたいなあ。
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