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Aug 31 2018

甘々とトコロテン. OLD BMX SPECIALITY, BONZ BROS.

1◾️缶入りのクッキーが食いたいのである。
 むかし、ちょっとしたお使い物やお中元なんかでもらったことがあるあれである。安物でいいのだ。あれを(缶ごと)抱えてたらふく食いたい。そして子供のように甘々と辟易したい(ちなみに大人になったわたしは甘いものとクリーミーなものは実はあまり好まないのだけど)。そんなことが5月くらいから頭の中で渦巻くのだ。ところが。どこにでも売っていると思っていた缶入りクッキーが、探すとどこにも見つからないのですよ。お菓子屋さん、ケーキ屋さん、デパート、ショッピングモール、どこへ行っても売っているクッキーは洒落て小分けされたものの箱詰めで、とても昔のあの雰囲気ではない。
 ああ、子供の頃たまたま家にある缶入りクッキーを、こっそりとビニールテープを剥がし誰にも内緒で食したあの甘美な背徳感を、大人になったいま……味わいたい。

 そんなふうに思うことがここのところけっこうあって、例えば小学生のころ秋葉原でおふくろにおもちゃを買ってもらった後によった万世のハンバーグが食べたくなったり、西新宿の10円たこ焼きが食いたくなったり、原宿の50円焼きそばが頭から離れなかったり、東急文化会館の裏の駄菓子屋を探し回ったり、山王坂ちょい手前ボーリング場裏 札幌やの行方を探したり………..。あるいはモコモコ・アイスやサントリーの薄めて飲む瓶入りオレンジ・ジュース(なんだっけ? )、ゴダ(駄菓子屋ね)で売ってたガラスの筒入りゼリーなんかを繰り返しくりかえし浮かべてしまうのです。求めてやまない味の記憶だけれど、カップ・ヌードルだって、一個360円で売っていたころの味は今とは明らかに違うのです。それが欲しい。

 そして温度計が連日40度近くを指し示す夏の日の午後、こんどは「50円焼きそば屋にあった10円のトコロテン、美味かったなあ」と、思い出してしまったのでありました。いま思うに、そのトコロテンはもしかしたら酢醤油でもダシ醤油でもなく、ただの醤油だけかけて出されたものだったかもしれないけど。

 だから我らは行くのですね。夏の日差しを浴び、自転車に乗って、美味いトコロテンを目指すのです。どこへって、もちろん伊豆です。だって関東でトコロテンといえばまずは伊豆でしょう。
 ほら、あそこに。あのツルツルとさっぱりして滋味涼やかな極上のトコロテンがあるのだよ。
2

 なんて感慨もなく、店あらばトコロテンを狙う我々。待ち合わせ場所にふたり来ないので電話してみたら、其奴等はどうしてか八ヶ岳の登山口で我らを待っているのでありました。電話口で「熊丼、クマ丼」なんて言ってる。なんでよ? 
 しかし謎への興味よりいまはトコロテンです。3

山を登り4.5

浄蓮の滝なんかはチラ見で済ませ4.6

上る。4

峠を越え5

思いを馳せ6

こんどは下り7.5

トコロテンです。7

こういうときの充実感て、8

9

いいんだよなあ。クルマとかだとイラッとする場面がなぜだか笑顔になる。10

 我らは走ってはトコロテンを食し、夏の夕暮れを眺めてはトコロテンを思い、宿のおばちゃんにまでトコロテンを所望。11

あちこちで地元のトコロテン状況を物見遊山するのですね。海ほたるを見てもトコロテンに見えたりして。12

そのような幸せってあるものです。15.5

 自転車の旅って、実は他所ではそういうものじゃない。どこへ行ったかが重要だったり、走った距離の長さが自慢だったり、どのくらいのタイムでそこを走り抜けたかがポイントだったりする。でも視点を少し変えれば、その旅はとてもフリーなものになるのですね。そこにBMXがあるというところも小さくはない要因なのだろうけれど、トコロテンへの思いひとつが加わることで、自転車という ” 道具 ” は単に移動するための機械ではなく ” 相棒 ” へと、まるで別のものに変わるのです。15

だから世に垂れ流される情報や常識なんて糞食らえなのであります。だって、その方がシンプルに嬉しいじゃありませんか。隣の芝生なんてどうでもいいじゃありませんか。そのような屈託のない喜びの中にたゆとうことが嬉しい。少なくとも今の我らはね。
 であるからして、あっちへぷらぷら、こっちでウロウロ。で、トコロテン。ハハハ。16

 それにしても、伊豆へ来るとどこへ行ってもトコロテンがあるものです。流石です。こんどは時間をかけて浄蓮の滝を眺めつつ18

わさび畑を横目に19

山葵トコロテン。あ〜、美味いなあ。20.5

 ほら、遊びの中にある自転車って美しいでしょ。21.5

そんなふうに、トコロテンで伊豆の道を繋いで行く我らです。21

が、小鯵寿司はいちおう。22

そしてのどかな漁港を通り過ぎ、23

テングサ(トコロテンの材料ね)のサラシを興味津々で眺めるのですよ。24

 そうしてわかったことは、トコロテンて、その地、その場所、その家で味も風味も食べ方もかなり違うということです。酢醤油やだし醤油がスタンダードですが、酢と塩で食べたり、黒蜜をかけたり、醤油と柑橘類だったり、カラシ醤油もあり、ワサビも唐辛子もあり、海苔を散らしたり、それがゴマだったり、あずき餡を投入したり、きな粉かけ、アオサとカラシ、もう様々。もちろんトコロテン自体だって、弾力が心地いいもの、プチプチと弾けるように切れるもの、滑らかなもの、ボソッとしたもの………。ああ、こういうのって嬉しい。まるでチェーン・リングとフリーとその材、歯数、チェーンラインの組み合わせに夢を見ているようじゃありませんか。
 で、地元の先輩方のお話による ” 最高 ” は、ミカンの絞り汁と醤油……らしい(伊豆の先端あたりのお話です)。そうと知ればそれを食べずにはおられまいて。
 でもこれが無いんだなあ。時期(ミカンの)のせいか心がけのせいか、どの食堂でも、浜茶屋で聞いてもミカントコロテンが見つからない。その間にもところてんは食すのですがね。
25

探します。でも、実はいいかげん暑いのよ。26

だから海に飛び込んじゃったりしつつ、27

かき氷でウフフ。そのようにフリーである我らです。28

 海風にさらされ、海パンでまたがられ、ダートに揺られ、暑さに熱くなり” 相棒 ” はより相棒の度合いを深めていきますね。29

まにまに30

色々に釣られてしまうのですけれど。31.5

 そして迷い込んだ天城越え。31

山葵沢、小夜時雨、天城隧道。迷い恋は無いけれど、(←名曲を意識してますです)32

落石通行止めはある。天城です。33

ま、自転車ですから。34

 しかしホント、ウロウロぷらぷらしてるなあ。ぼくたち。天城トンネル(天城峠)では蝉時雨だけが響きます。異空間ですね。調子に乗って行ったり来たりして、35.5

立ち止まり、35

眺めて触って、36

こういう有名どころだけはいっちょまえにサイクリストの顔をする我らなのでありますよ。38

そしてまたトコロテン。たった二日の遠出だけれど、甘やかにフリーでとりとめのない、豊かな豊かなトコロテンの旅なのでありました。17
 ところで、我々。この後も蜜柑トコロテンには最後の最後までありつけず。「秋冬の伊豆なんてさ、海も空ももっと青いし、富士山だってくっきり見える。夏よりぜんぜんいいかもよ」なんて話しつつ、次なる遠出と蜜柑トコロテンへの思いを棚上げするのです。そう、これからの季節。自転車ウロウロぷらぷら旅には、もっともっといい季節いなるんだよなあ。さて、次はどこへ行こうかね?

 

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